疾患関連糖鎖・タンパク質の統合的機能解析 大阪大学21世紀COEプログラム
What's new COEメンバー 特任准教授 研究の目的 プロジェクト イベント・催し 募集 リンク
 
 
研究課題:HGFのもつ糖鎖機能の役割解明と創薬の研究推進

■研究代表者プロフィール
中村敏一 Toshikazu Nakamura (PhD)
大阪大学大学院医学系研究科生化学・分子生物学講座(分子再生医学)・教授

1972年大阪大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。77年徳島大学医学部講師、80年同助教授、88年九州大学理学部教授、93年大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター教授を経て、2001年より現職。専門は生化学、分子生物学、再生医学。特にHGFによる器官再生メカニズムの解析とその臨床応用。主な著書に「初代培養肝細胞実験法」、「HGFの分子医学」など。高松宮妃癌研究基金学術賞、持田記念学術賞、大阪科学賞、井上学術賞、紫綬褒章など受賞。
研究代表者:

中村敏一(分子再生医学・教授)
研究分担者: 松本邦夫(同・准教授)
研究協力者: 船越 洋(分子再生医学・准教授)
水野信哉(分子再生医学・助教)
町出 充(分子再生医学・助教)
福田一弘(分子再生医学・COE特任助教)
岡 清正(分子再生医学・特任助教)


研究概要


 高等動物における再生現象の中で最もドラマチックなものとして古くから肝再生が知られている。例えば、ラットの肝臓の70%を切除しても、残った肝臓の細胞は速やかに増殖し、約1週間もすると残余肝の重量はほぼもと通りに再生する。このような肝再生を促す因子の実体は長らく不明であったが、我々はその実体がHGF(hepatoctyte growth factor、肝細胞増殖因子)であることを1984年に発見した。さらに、その後の研究によって、HGFは肝細胞に加えて多種の上皮細胞や血管内皮細胞、心筋細胞、骨や軟骨細胞、造血幹細胞、神経細胞などにも作用して多様な生物活性を発揮することが明らかとなった。HGFは、これらの細胞に対して増殖促進活性を示すのみならず、細胞運動の促進、形態形成誘導などの活性も示し、機能的な細胞社会の構築に必須な生物活性を併せ持っている。さらに、HGFはアポトーシスを阻止して組織破壊を防止する作用や血管新生作用を有している。
 これらのことから、HGFは肝再生をはじめ多くの組織や器官の再生に働く生体修復因子であると考えられ、HGFは生体の自然治癒力を支える実行分子と言える。我々は、HGFを用いて生体の再生能を最大限に引き出すことによって、難病の治療が可能になると考えている。実際に、我々はこれまで各種の疾患モデル動物を用いて、HGFが疾患の発症阻止・治療に顕著な効果を示すことを明らかにしてきた。HGFは劇症肝炎、心筋梗塞、急性腎不全などの急性疾患のみならず、肝硬変、慢性腎不全、肺線維症、心筋症など、慢性の疾患に対しても強力な治療効果を発揮する。
 HGFは分子量85kDaのタンパク質で、5本の糖鎖を有している。HGFの多彩な生物活性は、標的細胞上のHGFレセプター(c-Met)にHGFが結合することによって発揮されるが、HGFの機能に対して、糖鎖がどのように関わっているかについては、これまで全くといってよいほど研究が行われていなかった。そこで今回、HGFの糖鎖機能を明らかにすることは、HGFによる生体再生機構の理解を深める上でも重要な問題と考えられる。また、HGFの糖鎖に改変を加えてHGFの機能をさらに高めたり、新しい機能を加えたりすることにより、難病の治療に効果の高い次世代HGF を創出することが可能と考えられる。
 我々は、このプログラムを通してHGFの糖鎖機能を明らかにし、生体修復因子であるHGFをより効果的な治療因子として難病治療に役立てることを目的としている。


図
ラットの肝臓の 70%を削除しても、残った肝臓(写真A)の細胞が活発に増殖し、 約1週間でもとの肝重量に回復する(写真B)。HGF は肝再生因子の実体である。 現在、HGF は肝臓をはじめ様々な臓器の再生を支えることが知られている。

最近の代表的な論文


1) Machide M, Hashigasako A, Matsumoto K, and Nakamura T. Contact inhibition of hepatocyte growth regulated by functional association of the c-Met/hepatocyte growth factor receptor and LAR protein-tyrosine phosphatase. J. Biol. Chem., 281, 8765-8772, 2006.
2) Matsumoto K and Nakamura T. Mechanisms and significance of bifunctional NK4 in cancer treatment. Biochem. Biophys. Res. Commun., 333, 316-327, 2005.
3) Mizuno S, Matsumoto K, Li MY, and Nakamura T. HGF reduces advancing lung fibrosis in mice: a potential role for MMP-dependent myofibroblast apoptosis. FASEB J., 19, 580-582, 2005.
4)

Fukuta K, Matsumoto K, and Nakamura T. Multiple biological responses are induced by glycosylation-deficient hepatocyte growth factor. Biochem. J., 388, 555-562, 2005.

5)

Kim WH, Matsumoto K, Bessho K, and Nakamura T. Growth inhibition and apoptosis in liver myofibroblasts promoted by hepatocyte growth factor leads to resolution from liver cirrhosis. Am. J. Pathol., 166, 1017-1028, 2005.

 

PAGE TOP |

Copyright 2003 Osaka University. All Right Reserved.
Integrated functional analyses of disease-associated sugar chains and proteins, Osaka University