疾患関連糖鎖・タンパク質の統合的機能解析

■研究代表者プロフィール

辻本賀英　Yoshihide Tsujimoto (PhD)
大阪大学大学院医学系研究科遺伝医学講座（遺伝子学）・教授

1972年大阪大学理学部生物学科卒業。1977年大阪大学大学院理学研究科修了、理学博士。米国カーネギー発生学研究所研究員、国立基礎生物学研究所助手、米国ウイスター研究所助教授・准教授を経て、1991年より現職。専門は分子生物学。Leukemia Society of America Scholar(USA)、日産科学賞、大阪科学賞など受賞。

研究代表者：	辻本賀英（遺伝子学・教授）
研究分担者：	恵口　豊（遺伝子学・准教授）渋谷利治（遺伝子学・助教）
研究協力者：	新沢康英（遺伝子学・助教）松岡洋祐（遺伝子学・COE特任助教）児玉高志（遺伝子学・SORST研究員）崔　正国（遺伝子学・SORST研究員）

　アポトーシス(プログラム細胞死)は、個体発生期の形態形成、組織のホメオスタシスの維持やがん細胞などの有害細胞の除去など、多くの生命現象に関わる細胞の自殺機構であり、その破綻は、がんや神経変性疾患など種々の疾患発生の原因になることから、基礎研究にとどまらず医学の分野においても注目されています。アポトーシスのシグナル伝達において、ミトコンドリアが重要な役割を演じており、アポトーシスシグナルの集約場所として位置付けられています。十分量のアポトーシスシグナルがミトコンドリアに伝達されるとミトコンドリア膜の透過性が亢進し、格納されていたアポトーシスシグナル伝達物質が細胞質に放出され、カスペースとよばれるたんぱく分解酵素群の活性化が惹起され、細胞死の実行が行なわれます。また、ミトコンドリアの脱機能がネクローシス型の細胞死の誘因になることも知られています。我々が発見したBcl-2およびそのファミリーたんぱくは、アポトーシスの代表的な制御因子であり、主にミトコンドリア膜上で膜透過性を制御することによりアポトーシスおよび一部のネクローシスを制御しています。我々は、Bcl-2のアポトーシス抑制機能の生化学的基盤を明らかにすることにより、アポトーシスの決定制御機構の解明を目指すとともに、アポトーシスのシグナルが如何にしてメインマシナリーを構成するミトコンドリアに伝達されるか、また種々の形態的特徴を伴いながらアポトーシスの実行が如何にして遂行されるかを分子レベルで解析しています。さらに、アポトーシスに加え、カスペースに依存しない細胞死や非アポトーシス型のプログラム細胞死などの分子機構の解明も目指しています。これらの解析により細胞が持つ死ぬための種々の機構を分子の言葉で記載することを目指し、細胞死が関与した種々の疾患の治療のためのストラテジーを提示することを目的としています。

1)	Nakagawa T, Shimizu S, Watanabe T, Yamaguchi O, Otsu K, Yamagata H, Inohara H, Kubo T, and Tsujimoto Y. The mitochondrial permeability transition dependent on Cyclophilin D regulates some forms of necrotic cell death, but not apoptotic cell death. Nature, 434, 652-658, 2005.
2)	Shigeomi S, Kanaseki T, Mizushima N, Mizuta K, Arakawa-Kobayashi S, Thompson CB, and Tsujimoto Y. A role of Bcl-2 family of proteins in non-apoptotic programmed cell death dependent on autophagy genes. Nature Cell Biol., 6, 1221-1228, 2004.
3)	Shinzawa K and Tsujimoto Y. PLA2 activity is required for nuclear shrinkage in caspase-independent cell death. J. Cell Biol., 163, 1219-1230, 2003.
4)	Konishi A, Shimizu S, Hirota J, Takao T, Fan Y, Matsuoka Y, Zhang L, Yoneda Y, Fujii Y, Skoultchi AI, and Tsujimoto Y. Involvement of histone H1.2 in apoptosis induced by DNA double-strand breaks. Cell, 114, 673-688, 2003.